極力、筋力は落とさずにいつまでも自分の足で歩き続けたいと思うのは自然なことですね!
歩くという移動機能はロコモティブシンドロームとも深く関わってくる身体活動です。歩くことを怠っているとロコモティブシンドロームを進行させてしまいます。そんな“歩く”について解説して行きたいと思います。
【歩くとは不安定な姿勢の繰り返し】
私たちが立っているという状態は、両足の中に重心が収まっている状態ということができます。
人の重心は仙骨というお尻の真ん中にある骨の前にあると言われています。この重心が両足で作られる支持基底面と言われる領域に収まっている状態が立ってバランスが取れている状態。
この安定した状態を崩し、支持基底面から重心を前へ運び、前に出した足部の中の支持基底面に移す作業が歩く動作です。
なので、歩行中の重心はほぼ支持基底面では無いところを通りながら足部の中を移動しています。人のバランス機能はこの精微なコントロールを繰り返し歩いています。
【歩くだけでは筋力はつかない?】
よく質問されることがあります。
それは…『歩いたら筋力付きますか?』と。
そんな時に私はいつもこう答えます。
『歩くだけで筋力が付く人は、自分の身体を支えることすら大変な人です。』と。
ただ、筋力にも最大筋出力と筋持久力があります。
最大筋出力とは・・・
どれだけ強く力を発揮できるか?
例えば、20Kgしか持てないのか?100Kgを持ち上げられるのか?
筋持久力とは・・・
どれだけ長く筋肉を使っていられるか?
例えば身体を同じ姿勢で10分しか支えられないのか?
1時間も同じ姿勢で支えられるのか?
では、歩く動作で考えてみましょう!
60分歩ける人は10分しか歩けない人より筋持久力が高いと言えます。
では1,000歩、歩ける人と10歩しか歩けない人は何が違うか?
もちろん筋持久力にも大きな差がありますが、10歩しか歩けない人はそもそも最大筋出力も低く、1歩、1歩の動作で身体を支えるために大きな筋出力の発揮が必要なほど筋出力が低下してしまっているのです。
それは体重50Kgの人で考えると50Kgの重りを脚で支え、10歩という距離を運んでいる筋力トレーニングと同じようなもの。それだけ下肢筋力が劣ってしまっているということです。
【歩行速度とフレイル・サルコペニア・ロコモティブシンドロームの関係】
歩行速度は高齢者の機能の低下と関係が深く、フレイルと言われる虚弱状態やサルコペニアと言われる(加齢性)筋肉減少症の評価基準としても使われることがあります。その基準では1,0m/秒未満の場合はフレイルもサルコペニアも疑われると評価されます。
そしてロコモティブシンドロームもまた歩行速度の低下をもたらす要因として考えられています。
歩行は全身運動としても知られており、歩行活動は下肢の筋肉だけでなく上肢も使って歩いています。特に体幹に限っては体軸内回旋を生み出すための体幹のひねりの動作や骨盤を水平に保つための骨盤周囲に付着している筋肉群(腰方形筋や中殿筋など)と動員される筋肉が豊富な全身運動です。
【ノルディックウォーキングとは?】
ノルディックウォーキングは中高年層の中で最近、普及が進んでいる有酸素性運動です。2本のポール(ストック)を使って歩行運動を補助し、運動効果を増強するエクササイズとして普及が進んでいます。
中高年層に普及が進んでいる最大の利点は、年齢・性別を問わず気軽に楽しめ、ポールを持つことにより歩行姿勢が正され、バランスの維持をサポートしてくれることだと思います。また一般的な歩行運動とは異なり、2本のポールを使用するため、上半身の筋肉が積極的に使われます。そのことで普通のウォーキングに比べてエネルギー消費量が平均20%程度高くなるそうです。
また、ポールを持って支えることにより下肢の関節(足首・膝・腰など)への負担が最大40%軽減されたという研究報告もあるようです。
【ウォーキングでは筋力はつかないけど筋力低下を予防してくれる】
前段では、歩くことでは筋肉は付かないとお伝えしました。しかし、歩行は下肢筋力が低下することを予防してくれる効果には期待が持てます。今現在の下肢筋力が少しでも落ちないようにウォーキングなどをすることは、下肢筋力の低下の予防になり、同時にロコモティブシンドロームやフレイル・サルコペニアになることを予防してくれると言えます。
【まとめ】
歩くだけでは筋肉はつかないけど筋力低下は予防はしてくれます。そして歩行速度はフレイルやサルコペニア・ロコモティブシンドロームとも関係が深いので、歩行速度が落ちてきたなぁと思う方はロコモティブシンドロームの入り口にいると思って、予防に努めましょう!
またノルディックウォーキングなどで歩行運動を行うことで、エネルギー消費量もアップし、歩行姿勢が正せるのでノルディックウォーキングなどの活用も有効だと思います。プラスで活動量計や歩数計をつけることで、平均歩数が上がるという研究報告もあります。「まずは形から入る」そんな工夫でモチベーションをコントロールしていきましょう!!
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